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   今回は、在日ブラジル人のフリージャーナリストで、自ら映画制作にも携わる、ホベルト・マックスウェル氏に、『逆転夫婦!?』について語っていただきました!
(text: tupiniquim)

Tupiniquim(以下、T):  テンポよく展開されるコメディに、制作陣のレベルの高さを感じました。 監督のダニエル・フィーリョはブラジルでとても尊敬されている監督だそうですね。

ダニエル・フィーリョ監督。本作の撮影風景より。

マックスウェル氏(以下、M氏): そうです。ダニエル・フィーリョは、ブラジル映画産業の繁栄に貢献した人物と言えるでしょうね。彼は元々、俳優として知られていました。特に1962年の『Os Cafajestes』と1963年のネルソン・ペレイラ・ドス・サントスの『 Boca de Ouro』に出演してから、俳優としての地位を確固たるものにしました。その後、数々の映画に俳優として出演する他に、ブラジル最大手のテレビ局“グローボ”のドラマに出演する傍ら、監督業にも進出するようになりました。こうして監督する作品が次から次へとヒットし、グローボ局を代表する製作者になった経緯があります。

T:ブラジルでは、“ノヴェーラ”と呼ばれるテレビドラマが国民の娯楽だとか。驚いたのは、ブラジルではテレビドラマが毎日放映されるんですよね。日本の場合、週一回のペースなので、続きを待たずに翌日すぐに見れるのは嬉しいですよね(笑)。また、ブラジルのテレビドラマ制作のクオリティの高さは、世界的にも評価が高いとよく聞きます。
M氏: そうそう。『シティ・オブ・ゴッド』の姉妹作で、今年8月に日本でも公開された『シティ・オブ・メン』も、元はテレビドラマシリーズだったんですよ。このシリーズのヒットが映画化に発展したんですね。このように、テレビドラマ制作と映画制作が密接に関わっている場合が多い。特に、グローボ局が1998年に“グローボ・フィルム”を設立して本格的に映画制作に乗り出してから、ブラジル映画界が活気付いたと言えるでしょうね。グローボ・フィルム制作の作品の中で例を挙げれば、世界的ヒットの『シティ・オブ・ゴッド』に始まって、日本でもDVDがレンタルできる『カランジル』、2006年のブラジル映画祭で上映された『オルガ』、昨年劇場公開された『フランシスコの二人の息子』など、上質な作品が多く制作されているんです。

その中でも、ダニエル・フィーリョの功績として大きいのは、彼が、テレビドラマの制作の現場で培ったノウハウを映画制作の現場に持ち込んだところ。彼がスーパーバイザーとして携わった作品を挙げようとすればきりがないほど、本当に多くの作品のクレジットに彼の名前を発見することができますよ。(注釈参照)また、この『逆転夫婦!?』を見ると顕著ですが、作品のタッチがブラジルのテレビドラマ風なんですよね。彼のセンスと力量が生かされた、非常にエンターテイメント色に富んだ作品です。

T: 主演のトニー・ハモスとグローリア・ピレスをはじめとする、豪華なキャストも魅力ですね。
M氏: この作品は制作陣だけでなく、出演者も、テレビドラマ界の顔ぶれが揃っています。トニー・ハモスと言えば、ブラジルのお茶の間では人気の二枚目俳優として知られています。だから、今回の映画のように、女性の話し方や身振り手振りのトニー・ハモスをスクリーンで見るのは本当に意外なんです!いつもテレビで見る色男とのギャップがもう最高におかしくて。しかも、面白いのは、この作品のトニー・ハモスの仕種や話し方がグローリア・ピレスにそっくりなところ。僕たちブラジル人は、グローリア・ピレスが普段テレビドラマに出演している姿を知っているから、そのそっくりぶりがすごく笑えるんです。おそらく、トニー・ハモスは、“女性”を演じるにあたり、一般女性ではなく、グローリア・ピレスが演じる女性像を参考にしたんだと思います。

T: 制作秘話として、この作品の脚本は、トニー・ハモスとグローリア・ピレスの出演が決まってから完成したそう。こうして、二人の俳優の特徴や個性を念頭に置いた上で脚本が書かれたことで、より絶妙なテイストが加えられたといえるかもしれませんね。 そして、主演俳優だけでなく、脇を固める豪華な俳優陣もこの作品の見どころですね。

オードリー・ヘプバーン似で知られる
ラヴィ二ア・ヴラサッキ(左) と
大御所グローリア・メネゼス(右)
の出演も作品に華を添えている

パトリシア・ピラール。昨年のブラジル映画祭上映の
『ズズ・エンジェル』では
軍事政権下の政府を相手に闘う母親役を熱演。


T:
ところで、マックスウェル氏は、在日ブラジル人の生活を映し出す『デカセギ』や、リオデジャネイロのスラム街から始まった音楽ムーブメント“ファンキ”を追った『Tá Tudo Dominado(タ・トゥド・ドミナード)』など、ご自身で短編やドキュメンタリーを撮られていますね。日本で公開される映画には、ブラジル国内の貧困や暴力をテーマにしたものが数多くありますが、その点についてはどうお考えですか?
M氏: ブラジルの負の部分を海外に見せることについて批判的な見方もありますが、私は、ありのままの現実の姿を見つめ、その過程から芸術が生まれるという作業はとても重要だと思います。歴史を振り返れば、サンバだってスラムから生まれた音楽ですが、今となってはブラジルを代表する音楽ですよね。大切だと思うのは、ブラジルの様々な側面を紹介していくこと。この点、ブラジル映画祭の存在は、大きい思います。この『逆転夫婦!?』ではブラジルの裕福な層の日常生活を見ることができれば、『歌え、マリア』ではブラジル北東部の文化を知ることができますからね。ブラジルは社会階級だけでなく、地域によってもその文化は様々ですから。私自身、“The Rabadas(ザ・ハバーダス)”という文化イベントを毎月行っていて、短編作品などを上映していますが、オルタナティブな方法で、もっとブラジルの様々な面が紹介されるといいなと思っています。

T: マックスウェルさん、ありがとうございました!

注釈:
『Orfeu』(1999) 『シティ・オブ・ゴッド』(2002)
『oi(オイ)ビシクレッタ』(2003) 『カランジル』(2003)
『レデントール』(2004) 『フランシスコの二人の息子』(2005)
『ズズ・エンジェル』(2006) 『O Ano em que Meus Pais Saíram de Férias』(2006)他多数。


写真:鳥羽瀬エヴェルトン
(Ewerton Tobace)

ホベルト・マックスウェル(Roberto Maxwell)
リオデジャネイロ出身。大学で地理学と映画を学ぶ。現在は静岡大学大学院で社会学を専攻。在日ブラジル人の生活を追ったドキュメンタリー『デカセギ』など、既に10作品以上の短編や中編を撮影している。現代のブラジリアン・カルチャーを紹介するイベントを、東京を中心に開催するグループ“The Rabadas Cultura Clube” のメンバー。
独自の観点から日本に関する記事を発信するブログも好評。(Português)


参考文献・資料 Adoro Cinema

     
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